ここはエリクシア国にある町。その町にある小さな道具屋で、ディアナという青年がはたらいていました。
ディアナはいつも角の生えたかぶとをかぶっています。町の人はだれもかぶとをとったすがたを見たことが無いので、「実はハゲなのでは……」とひそかにうたがっています。
そんなディアナですが、いつもニコニコ、仕事ぶりはまじめで、ハゲ疑惑をおぎなってあまりあるくらい町の人たちに好かれています。だけど、たまに店にエルフが訪れると、なぜかちょっとだけ態度が大きくなるのがとても気になります。
ある日のこと、ディアナは道具屋の親方から面白い話を聞きます。
「不思議なだんじょん?なんなんスかそれ?」
ディアナは親方のアルヴァに聞き返します。
「ここから北へずっと行ったところにあるおかしなダンジョンなんだよ。入るたびに形が変わるっていうそりゃあ不思議なダンジョンなんだ。昔っからあるが、誰もおっかながって入りやしないんだけどな」
「そりゃ〜ぶっそうっスね」
「だけどそのダンジョンには珍しい道具がごろごろ転がってるってウワサだ」
「珍しい道具!?」
ディアナは珍しい道具と聞いて飛び上がりました。ディアナは3度のご飯より道具が大好きな道具マニアでした。ディアナの部屋にはべんりな道具から使いかたの分からないおかしな道具まで(たまに道具なのか単なるモノなのかわからないよくわからないものなんかも)たくさん転がっているのです。
「そりゃぁ、一も二も無くゲッツ!するっきゃないっス!!」
ディアナはもはや風化されつつあるいにしえのギャグをすると、部屋にもどってしたくをととのえ、北へ向かってすっ飛んでいきました。
店番を放り出して。
半日くらい突っ走ったところに、不思議なだんじょんを発見しました。入り口に「不思議なだんじょん」と書いた立て札も立っているのでまちがいありません。
ディアナは殺鼠く、もとい早速ダンジョンに入っていきました。
ダンジョンの中は薄暗くはありましたが、たいまつが灯っていたので先が見えないほどではありませんでした。
少し歩くと、足元に何かを発見しました。なにか、封筒のようでした。
「なになに?ちぇっ。札束っスか」
ディアナはそれを投げ捨てました。ディアナが欲しいのは道具であってお金ではないからです。
封筒には「○×町ギルド」と書かれていました。そういえばこの間、ギルドの経理簿に使途不明のお金が流れた形跡があると大さわぎになっていましたが、きっと関係ないでしょう。
さらに歩くと、今度は小さいモンスターがいました。小柄なディアナの半分くらいの背丈しかない、ゴブリンの姿をした、だけどゴブリンとはちょっとちがうモンスター(仮に、ゴブリンモドキと呼ぶことにします)でした。ディアナは「勝てるっス!」と踏みました。
ディアナが攻撃態勢に入るより先に、ゴブリンモドキが飛びかかってきました。意外にすばやいゴブリンモドキは、ディアナをほんろうしながら3発くらい殴りました。
ディアナはこりゃたまらんとばかりに戦略的撤退を選択しました。
虚をつかれた形になったゴブリンモドキはディアナを追いますが、初動が遅れます。そのあいだに、ディアナは通路へ入っていきました。
どうやら、長い長い通路のようでした。
あとを追ったゴブリンモドキが通路の3つ目の角を曲がろうとしたとき……
「坊やだからっス!!!」
角で待ち伏せていたディアナにぶん殴られました。
ゴブリンモドキはぶっ飛びますが、ディアナは深追いをしません。暴力は彼の望むところではないからです。というのは建前で、本当は腕っ節が強くないのですが、いつも言い訳をします。
ディアナは一目散に逃げ出し(逃げ足ならイチローやリトル松井のベースランニングより速いと豪語するディアナです)、階下への階段を見つけて下ります。
ディアナはその後もモンスターに遭遇しては逃げ、遭遇しては逃げを繰り返しながらレアアイテムをゲッツ!し(中にはやっぱりレアなのか粗大ゴミなのか分からないものもありましたが)、とうとう地下27階まで下りました。
しかし、そこでディアナが見た光景は……
「……」
ディアナが階段を降りた先の部屋には、魔物がたくさん居ました。まるで、モンスターパーティーです。
魔物が一斉にディアナを見ました。
ディアナもそれに習ったわけではありませんが、部屋中を埋め尽くすモンスターたちを見回します。
ディアナは言いました。
「――認めたくないものっス。若さゆえの過ちというものは……」
次の瞬間には、ディアナの意識はそこにありませんでした。
「はっ!!」
ディアナはやわらかいベッドの上で目を覚ましました。時計を見ると、朝の5時でした。
「なぁ〜んだ。夢っスか」
といってディアナは2度寝のためベッドに入りました。
ディアナは気づきませんでした。ディアナの体には、無数のボコられたと思しき傷があったのです……。
END
梶@ 求@
「ユーネお嬢さん、なんスか、この小説……」
ディアナは読み終えた小説をテーブルに置き、作者に声をかけた。
「ディアナをモデルにして3日かけて書いたお話なの。面白くなかった?」
作者である6歳のユーネは、ディアナの感想が聞きたくて目を爛々と輝かせている。
「いや……まあ、面白いというかなんというか……」
ディアナはストーリーはともかく、目の前のまだ6歳の少女がこの小説を書いたという事実に驚いた。この歳で随分本が好きな娘だな、とは思っていたが、まさか文章まですらすらと書けるとは思わなかったのだ。
「ユーネお嬢さんは、将来は小説家っスね」
「うん!ユーネはね、将来は大ベストセラー作家になるの!そうしたら大きいお屋敷を買って、ディアナを執事として雇ってあげるね!」
ある昼下がり。道具屋の午後はいつもどおり平和であったとさ。
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