「ねえねえ、十賢者って知ってる?」

 なになになんだって十賢者なにそれ知らねー。

 ゴザのやつがどこからかまたわけのわからない知識を仕入れてきたらしく、自慢げにセッタたちに披露し始めたもんだからセッタたち三人はこりゃまた面白くなるぞとゴザの周りを囲んだ。

「で、十賢者って何?」

 とセッタ。

「うん。十賢者というのは世界の頂点に君臨する……とにかく偉い人たちなんだ」

「ふうん。何をする人なの」

 セッタの仲間の一人がゴザに聞く。

「世界中を飛び回って困っている人を助けてるのさ。悪いことをすると賢者様にぶっ殺されるんだ」

「ふーん」

 セッタたち3人は(たぶんゴザも)緑色のローブみたいなのを着て口とあごに長い白ひげを生やしたじじいの姿を思い浮かべた。右手には血まみれの鉄球を持っていた。賢者というからには頭が良いだろう。そして彼らにとっての知識の象徴というのは老人なのだ。ドワーフやエルフなどの亜人種を見たことの無い村の子供である彼らは十賢者の姿を亜人種ではイメージできない。

「賢者様は何を食べてるの?」

「賢者様だから何も食べなくていいのさ」

「何歳なの?」

「なにせ賢者様だからね。100歳くらいかな」

 わーすっげー長生きだな〜とか言っている彼らは当然エデューテという4000年生きる生き物がいるなんて知らない。フェルフもデルフも蚊帳の外。人間の子供である彼らの感覚では100歳くらいが人智を超えた長寿なのである。

 その後もゴザは賢者様は空を飛ぶだのジュデンの王様と友達だの不死身だのとありとあらゆるウソ論法を並べたてるのでセッタたち3人はいい加減飽き(このバカの知識はゴザの家のボケたじじいがゴザに教える噂話30%嘘話60%残り10%は愛情で出来ていますといった要するにそんなもんだ)、おいおいこの馬鹿どうしてくれようかと仲間たちとこっそり話し合った。

 話し合いの結果。

「ひゃっほ――う!!」

 3人でゴザを地べたに組み敷きズボンと一緒にパンツを下ろした。

「いやああああああああああああああああああああああああっ!!」

 脱がせたズボンをその場に放置し、3人で神輿(みこし)を担ぐようにゴザを抱き上げ猛ダッシュ。猛然と村の外れまでわっしょいわっしょい走り(元いた場所がすでに村のはずれみたいな場所だった)、流れの緩やかな少し深い川に3人でせーのと放り投げた。ざばん。村の子供ならこの川は遊び場のようなもんだから溺れるようなことだけはない。多分。

「わはははははバ―――――――――――カ!」

セッタたちは馬鹿笑いしながらそばでその様子を見ていた。すると――

「こりゃ―――――――――――――クソガキどもがぁっ!」

「やべえ!ダイゾウ爺さんだ!逃げろ」

 蜘蛛の子散らすように逃げ去るセッタたち。この爺さんは日柄一日村ん中を徘徊してイタズラしてるガキを捕まえては自分の家の周りの草むしりをさせるという恐怖の爺だ。やつの家の周りはすでにぺんぺん草の一本も生えていないのでその範囲は日に日に拡大され、そのうち絶対この村は砂漠化するとゴザが予言していた。馬鹿だから。

「マテゴルァクソガキー!」

「うぎゃ〜!!」

 どうでもいいがこのじじいは異常に脚が早い。このじじい絶対妖怪だよなどと叫びながら必死で逃げるも、間もなくセッタたちは捕まってこの村の砂漠化促進のための使徒なるだろう。

 カシンの村は今日も平和だった。

 

 

 

 フールは3年前からカシンの村に住む若者だ。ふらりとカシンの村へたどり着きふらふら歩いていたところ腹ペコで倒れ、村長に保護されたのだ。それ以来、「このご恩は一生忘れません」と村に住み着き、ボケて腰の曲がった村長ん家の畑を耕す毎日だ。

 そのフールは、鍬を担いで野良仕事だ。

「あははははははははは」

 さて、このフールと言う男、ずいぶんと陽気な男で畑仕事をしているときもニコニコしながら口笛吹きつつ時々思い出したように朗々と謳うような陽気というか陽気を通り越してアホかと思うような男だが、アホぶりが極まって子供が指差しつつ寄ってくるような人気者だ。

 基本的に子供は(子供に限らず人は)卑近なもの、ようするに頭が良い奴よりアホのほうが近寄りやすかったりするものだからだ。これはこの世の絶対真理だ。

 フールはちょっとした手品が得意で、ぺらぺらの紙にチョコチョコした絵とも文字ともつかぬ落書きをすると札が燃えたりする。一番年上のセッタはこんなもの子供だましだとしらけた顔で見ているが、他の子供たちは大喜びで見ている。

「そんなの、こっそり炎の呪文を唱えて燃やせば手品の出来上がりじゃん」

 げらげら笑って指摘してやると、フールは照れくさそうに後ろ頭を掻いた。

 やがて、村長がフールを呼ぶ声がして、フールは畑仕事に戻っていった。

 

 

 

 たまたまゴザとふたりきりになる時があった。いつもは仲間みんなでからかってやるが、二人だけで会うと何か気恥ずかしいというかやりにくいというか、そんな気分だった。ふたりだけっていうのは苦手だ。3人以上でバカ騒ぎしているのがいい。

 別に、いつもどおりのとある一日の風景に過ぎない。こういう風に外でふたりきりになるのも珍しいことではない。いつもつるんでる連中がちょっと遅れてくる、それまでのわずかな時間。

村の連中が待ち合わせに使う、村の真ん中にある広場のそのまたど真ん中にある15人はかけられる円卓くらいの巨大な切り株。それの両端にふたりが腰を下ろしている。ふたりの間には5人分の距離があるからもしかしたらこれは二人っきりというにはどうかという状況だったが、やはりそこにいるのはふたりっきりだった。

セッタは実は、ある部分においてゴザのことを認めている。セッタは幼くしてリアリズムに徹したニヒリストだが、ゴザはセッタとは違いロマンティストだ。歳をとればみんなロマンを捨ててリアリズムに走る。自然なことであり当たり前であり、それが多くの人間のあるべき姿だ。ロマンでは飯は食えないとはセッタの母ちゃんの弁だ。歳の離れた兄が居り、友達が年下ばかりであるセッタの精神的成熟は早かった。おっとな〜、だった。

そんなセッタは時々こんなことを思う。実はロマンティストのほうがずっと大人だったり強かったりするのでは、って。リアリストってやつは自分に出来ることと出来ないことを分け、そしてリスクの少ない道を選ぶ。良いことだ。立派な大人だ。でもロマンティストは、自分の出来ることの可能性を出来る限り模索する。自分の出来る精一杯の判断をつかない。現実から目を背けている者たち。

だけど、こういう側面もあるんじゃないか。真のロマンティストは自分の失敗、プレッシャー、そして全ての責任を背負う、絶対的に強者。リアリストはそれを眺めているしか出来ない弱者で、最終的には悪しきニヒリズムがロマンティストを冷笑し、酷く汚い、せこい罵声を浴びせることしか出来ない卑屈な卑怯者の道へ堕ちるしかないのではないか。

 セッタはまだ11歳の子供である。自分の在り方に不安を覚える年齢は人によって様々だが、彼は2つ下のゴザと遊ぶようになってからの5年間、このような思いを(幼少の頃はそれを意味のある、言語化できるものとして持っていなかったが)ずっと心の中に抱いてきた。まだ多くの人と出会っていない彼にはゴザが真のロマンティストであると信じるに足る準拠もまたそうでないと判断する準拠も持ちえていない。結局は、ゴザもリアリストの道を歩くことになるのかもしれないが、自分を基準にゴザを計ってしまったセッタはゴザに対してこの上ない焦りとも嫉妬ともつかない感情を拭えない。単にゴザの無邪気に憧れているのかもしれない。

 結局のところ、セッタは少し早熟の、少しだけものを考えすぎる子供なのだ。

 

 

 

ゴザが行方不明になった。小さなカシンの村はすぐにその話題で持ちきりになった。

夕方になっても家に帰って来ず、心配になった母親がゴザの友人の家を訪ねて歩いたけど、そのどの家にもいないという。心配になって村の青年団に頼って村中に話を流して反応を伺ってみたが、村の何処にもゴザのいる気配はないということだ。

あたりはもう、暗闇に包まれていた。

「ゴザのやつ……」

 村の寄り合い所。青年団の若者たちや村長、泣いているゴザの母親やそれに付き添っている数名の女性――いずれもゴザと仲の良い者の母親たち――が集まっている。セッタもなんとなくついてきたが、大人たちばかりで居場所も無い。大部屋の隅、窓の下に体育座り。従姉妹の女ガキ大将ロミナがさっきまでいたが、母親のミニー伯母さんに連れられて帰っていった。

大人たちはなにやら話し合って何人かがたいまつとランプを持って外へ出て行った。どうやら探索に出たらしい。

 その何人かが出て行くのと入れ違いに一人の男が入ってきた。

 フールだった。

 一応、青年団の名簿に名前が入っているのだろう。野良仕事を終えてやってきたのか、顔には土の汚れが付いていた。

「はあ、昼ごはんを食べた後に家を出て……それから行方が知れないと」

 この事態でもフールはアホみたいにでかい声で聞いた話を復唱する。

(誰だよこいつ呼んだの)

 セッタをはじめ皆彼の緊張感のない様子に怪訝な顔をする。

 そして、その視線の中心にいるフールは、懐からなにやら取り出した。いつも手品に使っている札……ではなく、それより硬質の、数枚のカードを取り出し、床に広げた。フールはそのカードをフンフンとりながら配置を組み替え、唐突に顔を上げた。そして何を言うかと思えば――

「ゴザくんの居場所がわかりましたよ」

 だと。

 集まっていた大人たちは、あるものはゴザの無礼な振る舞いに怒り不快を覚え、不謹慎さに顔をしかめて出て行き、あるものはあきれた顔をしてたいまつと火を持って探索に出た。

 やがて寄り合い所には人がいなくなり、フールとセッタとだけが残った。

「……馬鹿じゃねえの」

 セッタは誰もいなくなったところでフールにそう言い放った。

「みんなぴりぴりしてるところで、それって占い?そんな冗談……」

 セッタはフールの顔を見て、言葉を途中で切らざるを得なかった。

 普段から陽気なフールの顔は、この上なく真剣なものだった。

「……まさか」

「まさか?」

 本当なのか。そう聞いたら、フールはこくりとうなずいて、いっしょに行くかい?とセッタに問いかけた。

 

 村の寄り合い所から対して離れていない、ゴザの家。彼の家では牛を3頭飼っており、立派な馬小屋がある。

 フールはその牛小屋の戸を無遠慮に開け、奥のほうへとずかずかと入っていった。

「え……ここ?」

「うん」

 馬小屋の一番奥、藁をこんもり積んである場所まで行き、無造作にそれを掻き分けだした。

「ほら、君も手伝って」

「お、おう」

 セッタがいくらか掻き分けてすぐ、足が出てきた。いきなりのことで、セッタは驚いて転んでしりもちをついた。

「し、し、し……」

「死んでないよ」

 フールがそう保証してさらに掻き分けていき、全体をさらす。

 ゴザだ。

 フールがゴザの頬をぺちぺちと叩き、ゴザを起こす。ゴザは目の前にいる人物を見て驚き、うわわと手をじたばたさせて小山から転げ落ちて頭を打つ。打った頭を右手で撫でさする。

「お前、なにやってんだよ!村中みんなでお前を探してんだぞ!」

 セッタが怒鳴るが、ゴザのほうはきょとんとしている。

「それがなんだ?ただここで昼寝してただけってか?」

「ああ、藁に包まるとあったかいものね。僕も子供の頃よく眠ったよ。ただ乾燥しすぎていると体中がちくちくするのが厄介でね……」

 セッタが怒ってフールがあまり関係の無い話をして、どちらに対応したものかとゴザが困った顔をしている。

「ったく、さっさと母ちゃんのとこ戻れよ」

「やだよ」

 セッタが握ろうとした手を、ゴザが振り払った。

「僕は待ってるんだよ」

「誰をだよ!」

 セッタの大きい声に、ゴザがひるむ。しかしゴザは言い放った。

「十賢者……」

 はあああああああああああああああああああああああ?馬鹿じゃねえの?口をあんぐりと開けて馬鹿を見る目でゴザの目を覗き込むセッタ。

「十賢者は、困っている人を助けるために世界中を飛び回っているから、だから困っているお母さんを助けるために僕を探しにくるんだよ」

「……おめ〜、んんんんんっとに馬鹿だったんだな」

 コイツはロマンチストじゃねえ、ほんとの馬鹿だ。

 その後しばらく帰る帰らないでひとしきり揉め(帰るも何もこの馬小屋はゴザんチの馬小屋なのだが。それに誰かを呼んでくるという頭もヒートアップしていたセッタには無かった)、やがて小突きあいみたいになったところで、フールの仲介が入った。

「ゴザ?君は十賢者が来るまで帰らないって言うんだね」

「うん」

「じゃあ、僕と一緒に帰ろう」

 ゴザとセッタのふたりは「え?」という顔でフールを見つめる。そして大仰な身振り手振りの後、何を言い出すかと思えばこの男――

「僕の本当の名はツール・アッシュ。『先を見る者』の力を持つシャラディオの十賢者さ」

 ふたりの子供は唐突なその告白に、口をあんぐりと開けた。

セッタは、キレた。

「おま、ばっかじゃね〜の!?そんな与太、誰が信じ……」

 そんなセッタを押しのけて、ゴザがツールことフールの前に進み出る。

「ほんとにっ!?ほんとにほんとにほんとにほんとにほんんっっっとおに賢者様!?」

 フールの前に出るや、目をまん丸に開き口をがばと開け何度も「本当」を連呼して確認するゴザ。全く疑っていない。セッタがあわててゴザを御する。

「おいっちょっとまてよゴザぁ!だってコイツ3年前からずっとカシン村にいて村長の畑でイモ作ってたじゃん!賢者のわけねーだろっ!」

「だって賢者様だよ?イモを作るくらいわけないさ!」

「イモの問題じゃねーだろっ!!」

 フールはその様子をにこやかに眺めていた。

 やがてやけに騒がしい牛小屋の物音を聞きつけたゴザの母親がやってきて、愛息の姿を見つけるやまた泣き喚き、またぞろ人がやってきて――

 この騒動は収束した。

 

 

 

 あの騒ぎから1週間。自称十賢者のツールことフールは村を出て行くことにしたようだ。今回の件でよくも悪くも目立ってしまったことが旅立ちを決心した理由らしい。

「まあ、もともとアッチこっちをふらふらしてた身だしね。流れ者の僕にとってこの村は居心地が良かったよ」

 村の外れまで見送りにきた村長にフールが言う。見送りにきたのは村長と、彼と仲の良かった数人の友人と、何人かの婦人。それと、彼が見つけたゴザだ。友人は彼のためにいくばくかの糧食と土産を渡した。ゴザは「賢者様〜……」と涙と鼻水にまみれて泣いている。ぐずぐずと鼻をすする。

「のんびりしてると別れが辛くなるでしょうし、この辺で」

 別れの挨拶もそこそこに、フールは旅立った。

 

 村からいくらか離れた小川のそば。そこに大石にセッタが腰掛けていた。何をしているかというと、旅立つフールを待っていたのだ。

「やあ」

「よお」

 セッタは立ち上がり、フールと正対する。

「さて、何から聞きたいのかな?」

 フールが躊躇もせず先に口を開く。セッタは出鼻をくじかれた形になった。何かを聞くつもりではあったが、何を聞くつもりだったかなんてちゃんと考えていないのだ。

 とりあえず、頭に浮かんだ言葉をぶつける。

「……お前って、十賢者なの?」

 一番の疑問だったが、彼にとって全く屈辱的な質問だった。十賢者であるはず無いのに、まるで心のどこかでフールが十賢者であると信じている、期待しているかのような質問だからだ。そしてその質問に、フールはこう答えた。

「うん」

 またまた、セッタはわめきだす。

「嘘付け――――――――――――――――――――――――――っ!!!!」

 全く理不尽なことを言うガキなのである。嘘だと思っているのならわざわざ聞かなくてもいいものを。ただ、本人の口から嘘だというのを聞きにきたのだ。いやなガキである。

「じゃあ、じゃあ十賢者ってなんなんだよ!言ってみろよ!」

 嘘だといって欲しいのに何か真実を聞きたいみたいなみっともない言動。ただ絡みに来たのか。誰かみっともない俺をぶん殴れ!セッタは心の中で叫んだ。

「十賢者って何、か……」

 少しの間考える。しかし、熟考しているという感じではなかった。

 そして結論を口にした。

「僕にはわからないな」

 あははは。

がっくりと肩をおとすセッタ。馬鹿らしくてそのまま冷たい大石に背中を乗せる。ひんやりとした冷気が心地よくてもうフールのことなんかどうでも良くなった。

「え?なに?君は僕が占いで3年後にゴザくんが行方不明になると知っていたからカシン村に潜伏して彼をちゃんと見つけてあげるという使命を負っていた、とかそういう回答を期待していたの?」

 あははは。

なんだそれ。

「それとも、君は十賢者である僕に弟子入りしたいのかな」

 だから、俺はお前のことなんか信じていないって。

「なんだつまんないな。ついてきたなら世界の秘密を教えてあげたのに」

 俺は俺の行く末にしか興味が無いの。

「そうかい。でも世界っていうのは君が思っている以上に面白いよ。勉強をしてみるんだね」

 いつの間にかフールはいなくなって、というかいつの間にかセッタは眠ってしまっていたらしく、あたりをオレンジ色が包んでいた。いけない。こないだゴザが騒ぎを起こしたばかりだ。早く村に戻らないとまた大騒ぎするだろう。小走りに村へ向かうその途中でそれはそれでまた面白いかもなと思ったが遊び場を限定されたらやだなと思い直し少しスピードを上げて村へ帰った。

 

 

 

 翌日、セッタが広場のでかい切り株で仲間たちを待っていると、ゴザがなにやらうきうきとはしゃいで切り株へ寄ってきた。

「何だよゴザ。なんか嬉しそうだな」

 珍しく自分のほうから声をかけてみるセッタ。その声にゴザがニヘラっと笑い、手に持っているものをセッタに見せた。

 それは丸くて、平らで、小さいお皿みたいなものだった。その面には、

 『十賢者せんべい ツール・アッシュ』

 と、なにやら気取った感じの書体で書かれていた。

「…………」

「いーでしょっ!これ、フールにもらったんだよ!家宝にしなきゃ」

 セッタは神の速さでゴザからそれを奪い、持てる精一杯の力でそのせんべいをぶん投げた。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 せんべいは猛烈に回転し、風を切って飛んでいく。ゴザがあわててそれを追いかける。しばらくは落下しないだろう。完璧な角度と力だった。このままいくとセッタんチの数軒向こうのモモおばさんチの屋根に落下して追いかけて行ったゴザはしこたま怒られるだろう。あそこんちのおばさん怖いから。

 これはゴザのバカとフールのバカに怒ってやったことであり、決してセッタがフールに何かをもらえなかったのを根に持ってやったわけではないと彼は心の中で言い訳した。

 言い訳じゃねーよ。バーカ。

 

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